熟年恋愛
90歳になる親父の密やかな楽しみ
高城義一さん(仮名、57歳) いわく、親父・正義(90歳)の様子が最近おかしい。毎週金曜日の午前11時になるとビシッとした身形で外出し、午後3時ころ帰宅する。時には近県の温泉に行くといって2泊してくることもある。
親父に、「最近どうしたの?」と問い詰めると、「寂しいので話し相手を作った。なにも悪いことはしていないから、詮索するな」といい、話し相手(女性)の詳しいことは明かさない。お袋(正義の妻・85歳)は数年前脳梗塞で倒れ、現在は痴呆も出て老人保健施設に入所している。
親父の心情は分からないでもないので、自由にさせておくべきかどうか迷っている。90歳にもなる親父の行動を調べることに躊躇する。どうしたらよいか、との相談。私は、最近扱った「老人狩り」の事例を話した。
創作話で熟年男性を騙す女性の話
定年退職した西野一郎(63歳・妻はすでに病死)は山田真理子(50歳)と居酒屋で知り合った。デートを重ねるうち二人は肉体関係を持ち、やがて同居を求めた西野に真理子は言った。
「あなたの老後のお世話をしたいけど息子のサラ金の始末に300万必要なの。別れた夫との清算に必要な300万が払えず身を隠しながら生活しています。あなたに迷惑をかけたくないので、二つの問題が解決するまで同居できないわ」と泣きながら身上話をした。
すっかり、女に同情した西野は退職金600万円をおろして女に渡した。父、一郎からこの話を聞いた娘さんが、相談に来所。女の身元を調べたところ、夫と死別しており子どもはいない。女の話はまったくの創作でこの女は、居酒屋やパチンコ店に徘徊して老人や熟年の男性を漁って生活していることが分かった。
言われるままお金を払ってしまう男の話
夫、栄岳(60歳)は昔から女癖が悪く、2年前、付合っていた女(55歳水商売)と別れるとき、女から「あなたの子を密かに中絶したことがある。それ以来体調が悪くなった。私を捨てるなら慰謝料を出せ。さもなければ檀家のみなさんにこの事実を公表する」と脅されて1000万円払った。
これに懲りず今はH市の咲子と交際している。夫は女の言われるままお金を払ってしまう弱い男。大学生の子どもが二人いるのでそんなに軽々しく女にお金を取られたらたまらない。女の素性を調べて欲しい。
咲子(40歳)は中学生になる女の子と二人暮らし。無職の咲子を10日間追跡尾行した結果、出会い系サイトで熟年・中年男性漁りの日々。コンビニエンスの駐車場や、スーパーの駐車場で連日のように男とドッキングして,ホテルへ行く咲子の行動を撮影して依頼者に提出。奥さんは、「ああやっぱり夫は女に金づるにされているだけだ・・・」と嘆く。
この女と別れるときも「愛人契約を一方的に破った。私には相談する人がいる」と難癖をつけられて手切れ金500万円を支払ったことを後日知らされた。
愛人への遺贈がバレて揉めた話
75歳の男性が50歳の愛人のため遺言書(遺贈)を公正証書で作成したことが発覚。夫婦の間で大騒動が起こり、子供達が父親を説得して、遺言書を破棄させた事件など・・・
親父の楽しみを奪うのはどうかな・・・
本論にもどります。高城正義さん父子は、T市内の繁華街に貸し土地を所有していて裕福な家柄で、「老人狩り」の話を聞いた義一さんは驚いて、「親父の行動の実態を把握して、女の身元を調べてほしい。それから対処をきめたい」とのこと。
早速、正義さんの行動を調べると、金曜日の午前11時半に市内のデパート前のバス停で中年の女性と落合い、連れ立って路地裏の割烹(寿司・うなぎ・天ぷら)店に入り、2時間くらいかけて食事をしたり、ある金曜日はラブホテルに入り、また、県外のひなびた温泉へ二泊の旅行に出かけたこともあった。その女性は、同じ市内の未亡人関根喜美子(62歳)で、息子夫婦と同居していることがわかった。
報告書をみた義一さんは「その未亡人は、悪い人でもなさそうだし・・・親父の楽しみを奪うのはどうかな・・」と、迷いながら、私に意見を求める。
男女の別れは長引くほど高くつきます
「なにが悲しくて、62歳のオバちゃんが90歳のお爺さんと交際しているのよ。オバちゃんの目的はお金です。不倫男女の別れは、若くても熟年でも長引くほど女性のほうが傷つくことが定石なのでそのぶん高くつきますよ。奥さんの意見も聞いてください」、と私。
義一さんの妻は、「おじいちゃんのことが世間にわかったら恥ずかしくてしょうがない。第一、おじいちゃんの行動を聞いたら、もう気持ち悪くて見るのもイヤ!」とすごい剣幕。義一さんは意を決した。
後日、ご夫婦の報告で父親に「あの女性と別れなければ、先々倒れても親父の面倒は見ない」と通告したところ、正義さんはしぶしぶ義一さん夫婦の意見に従ったと言う。
はつらつとして、90歳にはみえない表情でデートを楽しんでいた正義さんが、ショゲて家の中に閉じこもっている姿を想像すると、「長生きしている夫婦の幸せって何だろう・・」と考えさせられた事件でした。
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一句 (詠み人知らず)
たのしみは 春の桜に 秋の月 夫婦仲良く 三度喰うめし |
罪滅ぼし介護と復讐介護
夫が、(脳梗塞や痴呆で)倒れた妻を介護することを「罪滅ぼし介護」というのに対し、妻が(脳梗塞や痴呆で)倒れた夫を介護することを「復讐介護」と言うのだそうです。後者は、車椅子散歩も出ない、食事も好物を出さない、テレビも見せないなど散々老妻にいびられるそうです。
妻をいじめるとその報いは必ずくるようです。「晩年になって老妻からこのような復讐を受けないよう女性に愛される熟年になってください」と、物の本に書いてありました。
夫婦問題解決の方程式は、禅の「公案」解決より難しいようです。
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