円満離婚を実現するために必要なこと | 茨城離婚相談所(茨城県日立市 弁護士要らずの離婚手続き・協議離婚・離婚問題の相談)

円満離婚を実現するために必要なこと

私の人生に大きな影響を及ぼした事件

登場人物apd0305-s.jpg
・新田次郎(38歳)さん・・・中堅規模の土木会社勤務。一級土木施工管理士
・新田幸恵(38歳)さん・・・次郎さんの妻。専業主婦。
・Aさん・・・紹介者
※夫婦に子どもはいない。婚姻期間 6年。
※登場人物はすべて仮名


悲劇の始まり

hpsb0304c-s.jpgAさんと私は新田宅を訪問。コタツに一人横になっていた新田次郎さんは、起き上がって温和な笑みで迎えてくれたが顔や首がケロイド状になっていて、痛々しくて正視できない。
 
次郎さんは毎日仕事が忙しく連夜の午前様帰宅。土日も仕事に追われ自宅には「メシ・風呂・寝る」のために帰宅するだけ。夫婦生活もほとんどなかった。子供のいない幸恵さんは近隣との交際もなく、市内に友達もいなかった。

「たまには早く帰ってきて」「月に一度の土日くらい家にいて」と哀願する幸恵さんの願いも聞き入れず仕事に明け暮れる毎日で、妻が寂しがり夫に頼っている心を見抜けなかった。
 
一匹のネコを抱きながら深夜まで夫の帰宅を待っている幸恵さんを疎ましくなった次郎さんは深夜帰宅してケンカになるのがいやで、団地近くにある公園の駐車場に車を止めて車中泊を繰り返すようになった。
 
「女と外泊している」と邪推した幸恵さんと口論が激化する一方。元来が無口でおとなしい次郎さんは、幸恵さんにキチンと説明しないまま生活態度を改めなかった。そしてこれが悲劇につながる。

沸騰した油を夫に振りかける ilm04_fb02003-s.jpg

ある日曜日の朝。次郎さんは居間に寝転んで新聞を読んでいると、幸恵さんが鼻歌交じりで台所で何かを沸かしている。笑みも浮かべていたと言う。次郎さんの頭上に、ナベを持って無言で立った幸恵さんは中の沸騰した油を次郎さんの顔面や胸部にふりかけた。
 
「ギャー!」と言って部屋中を転げまわる次郎さん。救急車で病院に運ばれ、幸恵さんは自宅付近を放心状態で彷徨っているところを警察に保護されたあと逮捕された。次郎さんは、一週間くらい意識不明が続いたが一命はとり止めた。後日、でん部の皮膚を顔や首、胸部などに皮膚移植して六ヶ月後に退院した。
 
退院して自宅静養6ヶ月になる時期に私はAさんの案内で新田宅を訪問。以上の顛末を聞いた次第です。

離婚に向けての話し合い

cj009c-s.jpg幸恵さんの刑事処分は省略しますが、彼女は数年続いた嫉妬妄想でウツの状態がかなり進んでおり、精神科に通院していたことも調べでわかったそうです。事件後1年目の当時は実家に帰って両親と暮らしていました。
 
次郎さん私に「入院中、妻の父が見舞いに来てくれたが、離婚のことはお互い話題にできなかった。事件後1年が経過するがこのまま放っておけないので離婚の手続きに協力してほしい」」と言いました。

私は、事前に行った文書等のやり取りから大方離婚の合意があるものと判断し、幸恵さんの了解をえた上で幸恵さんの実家を訪問。ご両親と、幸恵さんが迎えてくれた。幸恵さんに兄弟もいると聞いていたが当事者以外は同席しないことに、この家族の節度のよさを感じた。

双方無条件で円満に離婚したい

ilm06_ac01062-s.jpg緊張して座っている幸恵さんと父親に、挨拶を済ませたあと「済んでしまった事件のことに触れるつもりはありません。次郎さんは話合いで円満に離婚したい、とのことです」。父親「条件は?」 私「双方無条件ということで、です。

皆さまもいろいろ言いたいことがあると思います。当人も、こうなったのは自分にも非があると言っています」。事件の損害賠償に触れず(無条件)、「自分(夫)にも非があった」と自省の弁を聞いた両親と幸恵さんに和んだ空気が流れた。 

「娘は家を出てアパートを借りて生活すると言っている。無条件を提示されたのに心苦しいが、せめて再出発のためにアパート代くらいみていただけないでしょうか・・・」と遠慮気味にいう父親。
 
公立中学校の校長職で定年退職した父親。暮らしが貧しくないことは家屋敷の内外を見ればわかる。その父親が、「アパート代を出して欲しい」と、些細なことにこだわる意味を、「結婚が破綻した幸恵さんの悔しさを主張し代弁したもの」、と判断した私はその要望を速やかに本人に伝えると約束した。
 
「幸恵さんの自署した離婚届が次郎の下に届いたら30万円を幸恵さんの口座に振込む」という約束を交わして、幸恵さん宅を後にした。ことがうまく運んだので、残雪の立山連峰の風景を楽しみながら帰途に着いたのですが、思いもよらない展開になってしまいました・・・。

次郎さんが死んでいる!

ilm06_bd03018-s.jpg次郎さんに顛末を話すと、にこやかに30万円を渡してくれました。次郎さんの生命保険の死亡保険金受取人を妻から次郎さんの兄に変更する「保険金受取人変更の委任状」も一緒に預かりました。

そして私は「離婚届が届いた」という次郎さんからの連絡を待っていたのですが・・・。木、金、土、日曜日が経過しても次郎さんからの連絡がないばかりか、土日からかけ続けている電話にも当人は出ない。

不審に思い、月曜日に近所に住むAさんに事情を説明して部屋の中をみてもらった。まもなくAさんから「大変だ!次郎さんが死んでいる。いま警察を呼んだ」と息を切らした返答。
 
死因は、肺炎と心不全でした(1年前の火傷に起因すると思われます)。幸恵さんからの「離婚届」の入った封筒はポストに投函されたままでした。次郎さんの実家に電話で急報を入れ、勤務先の社長にも報告。次郎さんの親族が日立に来てあわただしく葬儀を行いました。

妻が相続権を得るilm01_ba04046-s.jpg

幸恵さんの実家に事情を連絡して、「30万円は送金できなくなった。詳しいことは遺族と相談してから連絡する」旨を手短に伝えた。葬儀後、遺族と今後の打合せ。
 
次郎さん夫婦の間で離婚は合意したのだが、役所に届出をしてないので離婚は成立していない。したがって、土地建物等の遺産に妻の相続権が発生し、生命保険金1000万円も受取人変更届け前なので妻に受け取る資格が有ることを説明した。
 
次郎さんの兄弟は無欲な人たちなのでしょうか。「先方がどう言ってくるかわからないが、土地建物のこと、生命保険金のこと一切を渡辺さんにまかせます」といって、残務整理を終えた一週間後青森に帰ってしまいました。
 
2週間前通った信濃路の風景を見ながらO市着。ご両親と幸恵さんに再び対面しました。以前にも増して三人は緊張しており、幸恵さんは目はくぼみ、肌はかさかさで自責の念がありありうかがえる。私が何を言うか、じっと視線を落としている。

故人の気持ちを酌んで欲しい・・・

cj015b-s.jpg次郎さんに30万円を預かってから死亡までの経緯と、次郎さんの親族は青森に帰ったことを説明したあと訪問の本論に入りました。
 
「幸恵さんの署名した離婚届は次郎宅に届いていましたが、市役所提出前に次郎さんが死亡したため、離婚は成立しておりません。よって、次郎さん名義の土地建物は、幸恵さんが(3/4)と、次郎さんの兄弟姉妹(1/4)の割合で相続することになります。また、加入していた生命保険金1000万円は全額幸恵さんが取得することになります。」
 
しばらく沈黙が続いた後、父親が「渡辺さんのご意見を聞かせてください」と言いました。私は、故人の親族から「後のことは任せます」と言われている旨を告げた上で次のように言いました。

「次郎さんの死亡と、火傷事件のことに触れるつもりはありません。相続の件ですが、故人も幸恵さんも離婚に合意しており実態は離婚していて、夫が急逝したため役所に離婚届が提出できず戸籍上夫婦になっているだけ。

生命保険金も受取人変更の手続きが遅れたために、幸恵さんが受け取ることになりました。幸恵さんが、法律を主張するのであれば親族は対抗する術はありません。私は、故人が離婚の意志と受取人変更の意思をはっきり表明しているので、故人の気持ちを酌んで欲しいと考えています。そうして頂ければ故人の霊も安らぐと思います。

もし、生命保険金を親族に戻していただけるなら、その中から生活厚生資金を含めた和解金として幸恵さんに300万円をお渡しする、という決着はいかがでしょうか」

幸恵さんとご両親は、その場で私の考えを了解して手続きを一任するという結論になりました。

私の人生に大きな影響を及ぼした事件ilm01_ab01023-s.jpg

次郎さんの兄弟に事後報告で承諾を取り、土地建物を故人の長兄に名義変更すること。保険金1,000万円のうち700万円を故人の兄に返還するということで事件は完了しました。
 
この離婚と相続手続きは、次郎さんと兄弟姉妹の人柄があってこそ円満に解決したものと考えています。と同時にこの後長く続くことになった私のお悩み相談人生に大きな影響を及ぼす事件となりました。この事件以降私は離婚問題の円満解決には以下の点を注意すると共に、依頼者にもご紹介しています。

  1. 円滑な話し合いには「相手方との信頼関係の構築」が最も大事であること
  2. こちらが正当・利があるという場面でも、それを正面からぶつけてはならないこと(分が悪い相手を責めない)
  3. 相手の意見を真摯な態度できくこと
  4. むやみに法律論は持ち出さないこと
  5. 相手を労わること
  6. 相手の人柄を読むこと(但し、無用なハッタリや駆け引きは使わないこと)
  7. 肝要なことは極力簡素・簡略につたえること
  8. 話し合いの場面では、「間」「機」「空気」を素早く読み合意する時機を逸してはならないこと。(意見を持ち帰ったりして時間が経過するとお互い余計な雑音が入ってしまうから)

これは私が36歳ころの事件でした。

メインメニューの記事